平成31年2月22日(金) 日光木材業協同組合の研修会で
<建築士と木造設計>について講演させて頂きました。
少し長いですが 講演内容をコピーさせて頂きます。
起/ 10 分 ・木造設計の流れ⇒シートp1~p5
① 昭和20年~戦災復興。大量の木材が伐採され、15坪制限の住宅が建設される
② 昭和31年 文部省<木造校舎の構造設計標準仕様書>を発刊
③ 昭和25~30 各地で大火災が発生
・S27年 鳥取大火災 6,800棟焼失
・S29年 北海道岩内大火 3,300棟焼失
・S30年 新潟大火 約1,500棟焼失
・S31年 魚津大火 1,600棟焼失 ※糸魚川の南
④ 昭和34~大型台風被害
・昭和34年9/26伊勢湾台風 死者4,700名 倒壊半倒壊 80万棟 東日本大震災
・昭和36年 第2室戸台風
⑤ 昭和34年 日本建築学会;建築防災に関する決議で
<都市建築の不燃化促進の為、木造建築の禁止>を採択。これ以降、木造教育が高校や大学から消えた。この昭和35年から~昭和60年建築基準法の一部改正まで約25年間は木造に関する教育は暗黒の時代です。
この時代に学生だった方々は(ザックリ 現在50代以上の方々)木造と木について学ぶ機会がほとんど無かった、と言えます
⑥ 一方で昭和49年 枠組み壁工法が三井ホームにより日本に導入され、
⑦ 又昭和50年に入ると戦争末期から戦後植林した杉、桧、カラ松などの伐採期が始まり木材活用の社会的要請や木構造の新しい研究が少しずつですが着手されるようになる。しかし、時代は昭和30年代からの高度成長の真只中で建築業界も設計者もコンクリート、鉄、ガラス が中心で、木造と言えば住宅系の建物が中心の時代でした
⑧ そして平成22年を迎えます<公共建築物における木材利用促進法>木促法
が制定されると、木造と木材が一気に再評価されるようになり
⑨ 以後、建築基準法も木造に関する基準がドンドン緩和され、平成27年の基準法の改正では木造で出来ない建物は無い…と言えるまでになりました。
⑩ また昭和31年にボツとなった<木造校舎の構造設計標準仕様書>が改正発刊され、実に50年ぶりに木造設計がまた表舞台に戻って来た訳です。木造設計にとっては失われた55年とも言えます
承/30分 ・木造設計の現状(1)⇒シート p6~p9 p-02
では建築設計の分野で継子扱いされて来た木造が、今どう変化したかについて建築基準法を中心として幾つか紹介させて頂きます。
1-1;木材は燃える…
<用途地域による規制> 防火規定
防火地域 ・準防火地域 においては面積と階数によって準耐火建築物、耐火建築物とすべき規定があり、木造での耐火、準耐火建築物は難しかった。
<特殊建築物による規制> 非住宅系
特殊建築物(劇場・病院や診療所・ホテル・共同住宅・各種福祉施設・学校・デパート・倉庫・工場…等人が集まる場所)も用途と面積により 準耐火建築物、耐火建築物とすべき規定があり、こちらも木造での耐火、準耐火建築物は難しかった。
1-2; 木材は燃える⇒ しかし平成 25年以降
⇒準耐火木造、1時間耐火木造、2時間耐火木造の開発により全ての地域、全ての用途で 木造が可能となった。準耐火は<燃え代設計> 構造用集成材では25・35㍉(45分準耐火) 耐火木造は<メンブレン型耐火>強化PB(ア)25(+)21(ア)≧46㍉が代表的。 3時間耐火木造も㈱ シェルターが認定取得により高層ビルも可
※燃える速度は1㍉/分 消防は約15~20分で駆けつける。この間に燃え抜けない事、倒壊しない事が大事。
⇒h30・9月~改正で メンブレン型耐火に加えて木現しの防耐火構造も認定の予定?
2-1;木造は地震に弱い… ※ガチガチの構造か 柳に風構造か ?
<大規模建築物の構造制限>
・木造の面積・高さ制限 延べ面積≦3,000㎡ 最高高さ≦13.0m 軒高さ≦9.0m これを超える建物は主要構造物を耐火構造とする、の規定があり木造では難しかった
⇒h30・9月~改正 最高高さ≦16.0m 階数≦4.階…❓
・小規模建築は4号建築物と言われ 階数≦2階 かつ面積≦500㎡ かつ高さ≦13.0m かつ軒高さ≦9.0mの規制の中で 多くの木造建物が建てられた。しかしh25年以降は
⇒階数≧2階、面積≧500㎡、高さ≧13.0m 、軒高さ≧9.0m どれかに当てはまる時は壁量計算(+)ルート1;許容応力度計算 ルート2;層間変形角・剛性率&偏心率の確認 …等で安全を確認すればOKとなる
2-2;木造は地震に弱い⇒木造耐震基準の変遷
1;昭和46年 建築基準法が制定(旧基準)基礎強化…等 ⇔昭和43年十勝沖地震
2;昭和56年 新耐震設計基準/ RC造基礎、壁量計算、筋交いプレート…等
3;平成12年 基準法第改正/ 基礎構造規定、N値法と筋交い金物、バランス耐力壁
ホールダウン金物 ⇔ 平成7年阪神淡路大震災
⇒ 平成23年東日本大震災での住宅の倒壊は全壊13万棟、半壊26万棟合計39万棟、h12年基準は10%以下との報告
※地震に強い≒軽い建物の方がBetter 構造別重量 2階建て150㎡(22.5坪×2階建て(自重+積載荷重/200㎏) 固定荷重 建物重量梁断面(L=5.0m) 重量
木 造 500㎏/㎡(300㎏/㎡) 75t 120×360 100㎏ (500㎏/m3)
鉄骨造 750 〃 (550㎏/㎡) 115t H-350×175 250〃 (7,800〃)
RC造 2,000〃 (1,800㎏/㎡) 300t 300×500 1,800〃 (2,400〃)
承/30分 ・木造設計の現状(2))⇒シートp10~p11 p-03
3;木造は省エネの優等生
・地球温暖化防止策として省エネ基準が昭和55年に制定されました
① 1980昭和55年 省エネ基準⇒断熱性能が明記 ・熱損失係数 Q≦5.2 等級2
② 1992平成4年 新省エネ基準⇒断熱強化+ 開口部明記 /アルミサッシ&単板ガラス
・熱損失係数 Q≦4.2 等級3 ※寒さ対策&結露防止 が重要
③ 1998 平成11年次世代省エネ基準⇒断熱&開口部が強化 / アルミサッシ&ペアーガラス
(+)日射遮蔽性が追加 ・熱損失係数 Q≦2.7 等級4 ※現在の省エネ基準
④ 2013 平成25年 改正省エネ基準・次世代省エネ基準(+)日射遮蔽性の強化(+)1次エネルギー消費量⇒3☆で評価 ※外皮平均熱貫流率Ua≦0.87 〃日射熱取得率ηa≦3.0
⑤ 2020 平成32年 省エネ基準が義務化となります。
H25年の改正省エネ基準を達成するには 木造が一番有利な構造なのです
熱伝導率λ; 木 0.12: コンクリート 1.6: 鉄 55
1 ⇒ 13倍 ⇒ 460倍
4;木材はエコロジー建材の代表 皆様もう十分にご理解の事でしょうから…
・地球温暖化防止策とは ≒ 二酸化炭素の削減 をめざす
・製造時における1m3当りの二酸化炭素放出量
木1:コンクリート 7.5倍 :ガラス 20倍:鉄 330倍 アルミニウム 1,350倍 ⇒リサイクルが必要
・約40坪の住宅6.0tを蓄えている⇒杉丸太φ400 約20~30本分
RCやS造は1.5t、しかもneutralCO2であり、住宅地は街の森です
・視覚的、触覚的、音感的、調湿効果…等 優れた特性が沢山あり正に代表
転 / 3 分 ・建築士会の紹介⇒ シートp12
1;栃木県建築士会について
・建築士法で設立認可されている団体で、都道府県ごとに設置されています。
・建築士の資格を持った者が入会する資格者団体です
2;今から65年前の 昭和27年に設立され、現在会員数は1,200名、法人の
賛助会員が約180社で県内では最大規模の資格者団体です。
3;栃木県内の建築士は約5,000名強と思われ入会率は約25%です。県内の
主な町に支部が設置され現在日光支部を含め12支部で活動しております。
4;業種の内訳は建設業関係が約50%、設計関係が40%、他は教職員や行政
職員、不動産関の方々など多種多様な方々が在籍しており、会員相互の親睦、資質向上の為の講演、講習会、見学会の開催が主ですが県や各市町村の住宅相談、建築パトロール、耐震診断…等お手伝
5;昨年からは豊かな住いづくり協議会【家づくりサポート部会】を介して栃木First
を旗印に、木協連の方々と活動を共にさせて頂いております。
6;ちなみに日本の1級登録者数37万人⇒現業従事者は25万人と推定されます。
そのうち建築設計に約60%の15万人従事し60%の約 9万人が50歳以上の高齢
業界です。なお木造設計は大手設計事務所の方々には苦手なようです。
p-04
・次に建築設計で良く間違われ団体に栃木県建築士事務所協会があります。
一般には事務所協会の略称で呼ばれておりますが、こちらは事業者団体で、
専業事務所、兼業事務所併せて約180社が入会しております。法人資格で… 結 / 10 分 ⇒シートp13~p17
これからの 木造建築物の予想①
・非住宅系建物の需要拡大⇒平成22年の木促法制定から基準法が大幅に緩和されました。この流れの中でこれからは非住宅系の建物の増加⇒Office、店舗、診療所、工場倉庫…等 2~3階建ての低層の中規模建築(300~1,000㎡)の需要が増加
※今年1月群馬県館林市ローソン館林木戸町店は面はCLT,構造はLVL(単板積層板)
⇒構造も在来軸組みに加えトラス構造や張弦梁…等多種多様な構造が要求されて来ます
これからの 木造建築物の予想②
・準耐火、耐火建築物の〃⇒用途地域の防火規定、特殊建築物の防火規制の分野
でも1時間、2時間耐火木造が認可され、市街地の全ての地域で木造が可能となり鉄とコンクリートとガラス の街並みに 今後は木造ビルも建てられます。
これからの 木造建築物の予想③
・新素材CLT(直交集成板)の〃⇒平成28年、設計に関する告示が施行となり告示に基づく構造計算等を行うことで建築確認が可能となりました。また告示に基づく仕様で準耐火構造の燃え代設計も可能となりオフィスや共同住宅…等での大きな需要が…
木材業界への要望 ※少しおこがましいのですが、建築士側からの要望として
① JAS材の供給拡大⇒非住宅系では構造計算が必要 ・ヤング係数の表示義務
② 中大断面製材、集成材のスパンL≧8.0m材の安定供給
⇒中大規模では4間スパンL≧7.2m…等 の長手材が求められる。
※中規模(100~300坪)木材費・接合金物費・加工費の内、木材費の特注を減らしたい
③市場価格 m3単価の公開 ⇒ 価格がマチマチの為、木材は高くつく…の先入観あり。
⇒コンクリート業界や鉄骨業界は市場価格が平均化している
※消費者意識の変化⇒節は気にしない、高価な銘木は不要、モルダー仕上でOK、
非住宅系の中大断面部材では長物でヤング係数表示材の安定供給をお願いしたい
① 建築士会の取組
1;木造設計者の養成が木造の需要拡大の大きな要因にもなると思います。
新しい木造の時代に相応しい、木造設計者の養成が必要。木材の基礎知識から在来軸組み工法に加えてトラス構造や接合部の重要性確認…等など技術研修を計画。埼玉県では⑤回のシリーズで中大規模木造建築プロ養成講座
2;地元建築士会との交流を
建築士会日光支部は岩上支部長他 64名で活動しております
※栃木県の木づかい条例・林野庁の森林環境税…等、県や国の木材政策の協力団体として、建築士会も頑張って参りますので今後ともご指導、ご協力をお願いします
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